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日々の記録や雑感を書いていきます。


by stocktora

ああ、愛すべき銘柄。

今日はあるフィクションを株式風に書いてみました。

題:私の愛すべき銘柄

ああ、愛すべき銘柄よ。
最初、見つけたとき、すっごい魅力的だった。
他のコより割安で将来性も高く、チャーミングだった
地味で目立たないけど、皆から愛されて。
そんなカワイサに惚れてしまった。

分析によれば、ファンダメンタルは良好で、
ビジネスモデルはやや一部製品に頼りがちな
部分は不安材料かもしれなかった。
地合もあんまりいいとはいえず、投資判断
に迷っていた。今の資金余力じゃ、十分な
リターンが得られるかどうかわからず、
不安だった。

割安であることは事実だが、単元が5000株
からで、そうなると、少なくともかなり多額の投資
が必要で、それならもっと100株単位のカゴメ
みたいな優良株を選んでもよかったかもしれない。
「単元株が高すぎるよ」「自分自身を回りの評価
より低く考えているんじゃない」
最初、感じた印象はそんなところだった。

「銘柄に惚れてはいけない」業界では
よく言われることだった。
でも、惚れてしまったのだ。
ずっと見てるだけで楽しみだった。
チャートを見てるだけで。
その穏やかな値動きを見てるだけで。

ところが、ある日、変化が訪れた。
業界全体がよくなり、外資系証券会社が
こぞってレーティングを引き上げた。
「ああ、俺の銘柄が!」

かなりムリをしてムリをしてでも、
その銘柄を自分のものにしたかった。
気が付いたら全力買いしてたのさ。
もう仕事してても、何をしてても、
ずっと夢中だった。
その銘柄を思うだけで。
ラブソングをかけてハミングしてる
自分がいた。

ちょうど、仕事が忙しくなった日々が続いた。
愛すべき銘柄のコトなど構ってられなかった。
納期のある絶対な仕事を終らせなくては
いけなかった。愛すべき銘柄なのに、
チャートすら見れない日々が続いた。
IRや日経新聞すら見れる余裕がなかった。
コンビニで日経新聞を見ても、英字新聞を
みても、普段なら喜んで買うはずなのに、
何も感じなかった。

愛すべき銘柄とはすれ違う日々が続いた。
「忙しい」とは「心」を「亡くす」とはいうが、
ホントにその通りだと思った。
仕事やトラブル、将来の見通し、
頭の中が心を無くしていた、、。
そんな中、愛すべき銘柄だけが
私の支えだった。

そう、その時期に、きちんと愛すべき銘柄を
見てたら、不穏な動きがあることがわかってた
ハズだ。
「外人のファンド」の動向が。
「外資系ファンド(某F投信)」の動向が。

ちょうどその時、愛すべき銘柄はある
IRをひっそり出していた。
「海外市場で製品が売れるようになりました」
そう、国内向けの製品だけ作っていたのが、
ひょんなコトで海外の市場を見つけていたのだった。

株主達は心配した。今まで国内の市場でしか
製品を扱ったことがなかったのだ。
海外で通用するか、利用されるだけではないのか、と。
元々、真面目で素直な所が取り得なのだ。これを利用
するだけして、いい所だけを吸い取られて、捨てられる
んじゃないかと。ファンダ面からみて、ソコが非常に
心配された所でもあり、そこが弱さでもあったのだ。

そのニュースを海外の企業は見逃さなかった。
外人はファンドを設立し、その銘柄を自分のもの
にしようと考えた。そのため、気が付かない間に
その銘柄の株を大量に買い占めていたのだった。

一ヶ月遅れで、その外人ファンドから、
大量保有報告書が提出された。仕事も落ち着いて
ようやく愛すべき銘柄のことを考えられるように
なった矢先だった。その書類を見ながら、
「そろそろやばいかな」と思っていたそんな日。

ある日、突然発表があった。

「うちの会社は、ある魅力的な外人ファンドに
買収されることになりました。つきましては、
TOBにより買い付けします。公募価格は・・・・。
なお、TOB成立後、上場廃止します。
TOBされることによって、私の会社はますます
発展するでしょう。さようならJAPAN。世界に
飛び立ちマス」
緊急の発表は登録していたメール配信サービス
から提供された。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・

一方的に告げられたTOB。
携帯に届いたメール配信を見た時、
それはあまりにもショックだった。

そのショックに比べれば、
ライブドアショックなど、
たいしたことはなかった。

その銘柄が好きで買った株主たちは
落胆した。「海外ファンドに買われて
しまい、俺達の手に届かない所に
いってしまった」
「あんな外人ファンドになぜ・・・」

当然ながら、全力買いした私の
衝撃は計り知れない。

こんなんなら、手を出さなかったら
よかった。

こんなんなら、全力買いしなきゃ
よかった。

こんなんなら、なんであんな魅力的
なIRを出したんだ・・・・・。

こんなんなら、惚れた私が、舞い上がった
私が、載せられた私がアホだったのか・・

会社説明会の時、受付のお姉さんさ、
ちょっとからかっただけで、あんだけ顔を
真っ赤にしてたじゃない。
カゴメのトマトのように。
そんな素直な社員がいる会社なら
大丈夫と思って銘柄を決めたのに。
あのお姉さんも外人の社員と結婚して
いいように使われてしまうのだろうか。
人事だけど心配だ、、、。

一応、このTOBに応じれば、
買値よりかは価値が上がり、私にとって
利益はあったはずだった。
そればかりか、その銘柄の価値も
あがっていい事づくめだった。
素直に喜ぼうよ。

でも、でも、ずっと保有したくても、
「上場廃止・海外の企業とのMアンドA」
じゃ、意味がない。いつまでも、
振り向いてくれない銘柄を持っていても
しょうがない。
売れるうちに売って、お互いに幸せな
まま別れようではないか。

ここで、「いい思い出」「愛すべき銘柄を
愛した日々」を「利益確定」して
さらなる投資に役立てようじゃないか。
次の銘柄があるさ。銘柄なんて、
東証だけでいくつあると思っているん?

そう頭では納得してるけど、心が
どこか納得してない。

タイミングさえ、間違わなければ。
地合さえ、悪くなければ。
元々、ファンダはいいのだ、時期
だけうまくあれば、永久保有銘柄
にできたかもしれないのに、、。

うちの業界では「タラ・レバは禁止」
だというけれど・・・

やっぱりせつない。せつない。寂しい、、。
胸が締め付けられたりしてしまう、、。
当分はどうしたらいいのかなぁ。

しばらくは凹んで凹んで。
じっくり勉強して、自分を磨いて、
そして優良な銘柄を見つける確かな目と
タイミングをもってもう一度やりなおそう。

そう思っていてもなんだか寂しい、、。

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まぁ、「恋愛」を「愛すべき銘柄」に
おきかえて株式風に書いてみました。
どーでしたでしょうか。

たまにはこんなのも悪くないかな。
ふと昔の好きなコの写真を見つけてしまい、その時の
コトを思い出し、つらつらつらと書いてしまいました。

(専門用語がわからんひとはその部分だけ
読み飛ばしてもらっても結構です)

あくまでフィクションでござりまする。(事実に
若干の脚色をつけくわえているので、、)
それでは。
by stocktora | 2006-01-24 01:09 | その他